安全性について


 はじめに

 建築物の根底に有る物は「安心・安全」だと考えています。鳥や動物は「何故、家をつくるのか?」皆さん、当たり前のことですが、単純に子育てを安全にするためだと思います。私たちも同じ事が言えます。童話の三匹の子豚で出てくる「藁の家、木の家、レンガの家」あなたなら、どの家を選びますか?

① 地震災害について

 近年多発する大地震にポイントを置いて家づくりの安全性について話してみたいと思います。私は被災建築物応急危険度判定士の資格を持っており、下の写真の大地震発生直後に現地に行き応急危険度判定作業をしてきました。そこで実際に倒壊した建築物やがけ崩れ、地割れなど目の当たりにして建築士としての職能という責任の重さと現状の建築物の安全性について様々な疑問と問題点を感じてきました。このペ-ジの文章は私の主観が入っていますが本当に実感したものです。家づくりを考えている方は参考にしてください。

 新潟県中越地震     東日本大震災

    2004年10月23日    2011年3月11日

    M6.8         M9.0 

  長野県栄村大震    長野県神城断層地震

  2011年3月12日     2014年11月22日

     M6.7         M6.7



② 建築基準法の改定

 私は、同上の大震災に応急危険度判定士として判定業務を行った。これらの経験から建築の建て方が今までとは大きく変わった。このような大災害が発生する度に、建築基準法等が見直され改定されてきている。特に1923年に発生した関東大震災は建築基準法を大幅に改定した。その後1969年 岐阜県中部地震が起こり、法改正が1972年に見直され、さらに1972年 根室半島沖地震、1978年 宮城県沖地震が発生、1981年に大幅に法改正が行われた。1983年 日本海中部地震、1984年 長野県西部地震、1995年 阪神・淡路大地震により、2000年にも法改正が行われた。しかし、皆さんも記憶に新しい2004年 新潟県中越地震、2011年 東日本大震災が発生し、甚大な被害が起きてしまった。今なお復興ができていないのが現状です。

 建築士は皆、この改正されてきた建築基準法に従って建築の設計を行っている。しかし、被害を未然に防ぐことができない。何故だろうか?究極の考えたですが、「人間の考えることは自然災害に勝てない。」ということかもしれない。でも、これを言ってしまうと元も子もない。では、これからも起こるかもしれない自然災害に対して私たちは無力なのか?自然災害は防ぐことは不可能である。しかし、少しでも「助かる。」という確率を上げることはできる。


③ 地震災害から家づくりを考える

 3つのポイント

  1. 地盤(敷地)の選び方  土地の歴史、活断層、地質、傾斜地など
  2. 建物の造り方       建物の構造の選び方、耐震補強、耐震設計
  3. 住まい方         災害への意識、生活の変化、老朽化など

 皆さんは「地震に強い家づくり」と言うと思い浮かべるのはテレビコマ-シャルなどで放映する耐震補強金物とか免振基礎などという技術的な面を考えると思います。しかし、それも大切ですが、安全な建築を建てるには最も大切なのは地盤の選択です。家の建て替えや建設敷地が決まっている方は仕方がないのですが、敷地から探している方は、ここで安全か、非か、決まってくる。また、その上に建てる建築物への影響が大きい。

 次に、建物の造り方です。これは、設計士の腕の見せところ。建物をガッチリ作れば安心。ということでもない。ゆらゆらと柔らかい建築を作った方が安心かも知れない。木造だから壊れやすく、鉄筋コンクリ-ト造、鉄骨造だから安心というわけではない。より固い物は限界を超えると爆発的な破壊が起こることは誰でも解かる。

 建物が完成してからも「安心」の確立を上げることができる。例えばメンテナンスです。やはり老朽化した建物は壊れやすい。また、避難方法を考えておくだけでも確率が上がる。

追記)

 耐震の話は新築ばかりではありません。改築や増築についても地震対策は十分対応できます。同上にも少し書きましたが、大災害が起きる度に建築基準法が改正されてきました。特に1981年には大幅に見直し法改正が行われました。従って、1982年以前に建てた建物は地震に「弱い」言って良いと思います。それ以後の建物は安全ということではありません。地盤の状況や施工方法によっても状況は変わります。大地震に備え、少しでも命が助かる確率を上げるましょう。具体的には現在の建物を耐震診断し、耐震補強などして準備することをお勧めします。特に1982年以前の建物にお住まいの方は早めに建築士に相談して対策を考えた方が良いかと思います。



 ④ 水害、風害の被害について

  皆様も感じていると思いますが、最近、線状降水帯などによる水害による建物被害が報道されています。

 単なる異常気象のせいでは済まされない状況です。地震などの災害とは異なった被害が有ります。また、その

 対策は?と言われると様々な条件によって、なかなか難しいい対応を迫られます。2016年に発生した熊本大地

 震の際には地震発生後の3日目に豪雨災害にも重なり多変な被害になってしまいました。私はボランティアで

 当時、建物被害調査に現地に入っていました。地震災害の上、更に水害という被害で非常に被害判定に苦労を

 した経験が有ります。更に記憶に新しいい2018年の台風19号災害では長野市で大変な水害が発生しました。被

 災地の復旧支援でボランティアに入り被害にあった建築物の復旧相談にも関わりました。災害現場を見る度に

 「安全な建築物をいかに設計したら良いか。」「現在の建築方法は本当に安全なのか?」と思わされる事が

 多々あります。勿論、建築物の性能だけではなく、立地条件に影響する事は言うまでも有りません。急傾斜地

 の近くや河川の近く、地盤の弱い地域など「リスクの高い敷地」は避けるべきだとつくずく感じています。

  昨年度、私が活動している公益社団法人建築士会連合会で水害を受けてしまった建物を復旧させるマニュア

 ルを作成しました。士会連合会のHPで公開しています。是非、無料ですのでダウロ-ドして一読してみて下

 さい。勿論、一般の方だけでは無く、建築施工をしているプロの方も参考にしていただきたいと思います。  

     公益社団法人日本建築士会連合会 HP-url : https://www.kenchikushikai.or.jp/

 

  水害対策としての家つくりを考えている方やリフォ-ムをお考えの方、地震災害、水害などの自然災害に対

 応できる建物の設計をするにはどうすれば良いのか?同上にも記しましたが、敷地選定などの影響も大きく影

 響が有ります。敷地決定する前に相談下さい。